2011年5月2日月曜日

食の安全と安心フォーラム シリーズ第1回

テーマ:飲食物の放射能汚染の問題も含めた食の安全と安心の未来について

日時:2011年4月11日(月)15:00~18:00
場所:東京大学大学院農学生命科学研究科フードサイエンス棟503号室
主催:NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS)
出席者(敬称略):小野寺、、杉浦、花房(以上、東京大学食の安全研究センター)、小野(OSGコーポレーション)、局、森井、眞鍋、古川、高橋、守山、山崎(以上、SFSS)


【配布資料】
・東北地方太平洋沖地震の原子力発電所への影響と食品の安全性について(第23報)(平成23年3月16日作成 平成23年4月8日更新 食品安全委員会)
・放射性物質に関する緊急とりまとめ」のポイント(平成23年3月29日食品安全委員会)
・食品安全委員会委員長からのメッセージ(緊急とりまとめを終えて) 平成23年4月8日
⇒食品安全委員会情報はこちら
・日経ヘルス記事(2011.4.72011.4.8
・NPO食の安全と安心を科学する会(SFSS) 理事長雑感ブログ(2011.3.26.
・福島原発の放射能を理解する(眞鍋先生配布資料抜粋)
・局先生見解(2011.4.7)、源理事見解(2011.4.2)


【内容】
山崎)
昨年末、東京大学フードサイエンス棟にて、当NPOのシンポジウムを開催した(東京大学フードサイエンス棟竣工記念シンポジウム2010年12月10日、11日)。本日は今回の地震による原発事故の規制や被災地農家の風評被害について緊急座談会を開催し、6月のシンポジウムに繋げたい。なお本NPOは本年2月に登記を完了した。

今回の地震による原発事故についての規制は、3/29厚生労働大臣より召集を受けた食品安全委員会の暫定規制値が根拠となり、出荷制限が行われている。しかし、小泉直子委員長のメッセージである「緊急とりまとめは、かなり安全側に立ったものであり・・・」という現実とは乖離した「厳しすぎる」保守的な暫定基準値の内容から、実際には被災地である福島県や茨城県の被災地の農家に大きな風評被害が発生している。
当NPOの山崎理事長からも、審議中に内閣府食品安全委員会に、暫定規制値は「厳しすぎる」、すなわち風評被害は人災であり、多くの農家が被害を受けるため、規制値の見直しを提言するも、そのままの形で暫定値が出された。

局)
不安を感じている国民に対し、「本当に安全である」という明確なメッセージの発信が必要。当然、その担保となる安全性のデータを提示した上で、これらの発信を行うことが必要である。行政自体も、一度ではなく、何度も繰り返しメッセージを流すことが必要ではないか?行政指導の下で安全性の検査を行い、これらの検査を実施したものについては「検査済」と表示して出荷すること。

小野寺)
民主党の蓮航議員が野菜を食べるより、葛飾浄水で石原都知事が水を飲んだのは説得力があったように思う。

山崎)
海には境界がないため、漁業も相当に深刻な状況である。もう魚は買ってもらえないので、漁自体を止めていると聞く。売り物にならないから、卸段階で拒否するような例もある。
一方、日経MJの記事にもあるように、サブウェイ、モスバーガーは企業自身が検査を行い、「検査済」として物を流通させているような例もある。

古川)
今回の政府やマスコミ報道を見て思うのは、報道情報が複雑すぎる。一般消費者に正しく理解してもらうためには、シンプルな情報発信を、何度も繰り返すことが必要である。官房長官の枝野さんの発言もややこしい。そもそも「放射能」という言葉自体が怖い上に、例えば、便器の水や下水が1滴入っていて、その水が安全性に問題なく、「きれい」と言われてもその比較は意味がない。国民に対しては「安全ということ」だけを伝えること。また(安全だという)映像をわかりやすいビジュアルで表現すること、「(被災地の農産物を)食べている姿」等を映し出すこと。その時の根拠として、検査結果を手段として使うこと。政治家より、誰がやるか、つまり、信用がある人がやること、どういうイメージを持った人がやるかが重要である。落ちてしまったイメージというものは回復できない。

山崎)
日経ヘルスに掲載された小黒一正氏の発言によると、「風評が起こる時の問題は、なぜ汚染がゼロか否かも含め汚染度に関する「情報」が存在しないから」とある。また、「情報の経済学によると、汚染の度合いについての情報を優位にもつ農産物の生産者と、その情報が皆無に近い消費者の間で、「情報の非対称性」が発生している。その対策として、「シグナリング」と「スクリーニング」があるが、問題はスクリーニングが十分に機能していないこと。サンプリング検査はできても、政府はすべての農産物の安全性を確認することはできない。そのため、国民が疑念を抱くとのこと。

杉浦)
今回の放射能の問題は、BSE問題の時と違って、YES、NOがない。既に何ベクレルという数字が出てきており、基準内で低いものが良いとなる。当然、消費者としては、YES、NOが欲しい。

古川)
民間がやる前に、行政が仕組みの確立を行うべきである。しかし、そうすると検査されてないものが排除されるようになる。その結果、検査されてないものは一律ダメとなり、風評被害が発生することになる。

局)
食品安全委員会も健康栄養評価を行っている。その他にも、土壌汚染、 長期的なアプローチ、 ICRP、WHO等の世界的なサポートも必要であろう。

山崎)
現在の規制は、福島県、茨城県、千葉県等の都道府県レベルでの規制という問題もある。さらに海外からは輸入制限を受ける等、海外からみたらJAPANという考え方もされている。今後は継続的なモニタリングの必要性が急務。出荷制限していない茨城、福島の野菜に対して、当NPOがどうやって、データとわかりやすさで情報を発信するか。

日経ヘルスを初め、専門家の意見等から、日本人の40歳以上の50%がガンにかかる可能性がある。今回の原発事故の影響で、50%が50.5%になるだけとも考えられなくもない。
但し、ヨウ素は甲状腺に集積されるため、乳幼児に対するヨウ素の問題はあり、甲状腺ガンの可能性がある。チェルノブイリは乳幼児の甲状腺ガンのみ。一方、セシウムはガンにならないとされている。また現段階では明確なエビデンスもないのが現状。


局)
トータル被爆量、年代別被爆量などがデータとして必要。現段階では、低量被爆のデータはない。大量被爆や内部被爆とも違いがあるのではないか?ストーリー性、ビジュアル性を持って、もちろん科学者としての根拠を持って、現実案を提示すべき。実際にはカビ、アフラトキシンなどの危険性と比べてもかなり低い。しかし、これらの規制は国際基準から入るため、日本に合わせて基準の見直しが必要であろう。教育や根拠となるデータが必要となる。

眞鍋)
放射能の話は悪い話ばかりが報道される。先日の新聞の一面でも間違った情報が掲載されたが、訂正文は非常に小さい。メディアは安全の情報を取り上げない。

局)
ツチクジラ、イルカなど食物連鎖の上に立つもので定期的なモニタリングをするべき。過去のデータにもあるはず。チェルノブイリ事故の際に一時的に放射能の測定値が上がったデータがあったように思う。

山崎)
当NPOでは、科学的なデータをもとに「これは間違いない」という安全と安心な情報を、ホームページ等を通じて発信していく。良い情報、学術啓発を通じ、安心を伝えるという広報活動を積極的に行っていく。
その一環として、今回のトピックスはさらに問題が継続すると思われるので、6月下旬に東大でシンポジウムを計画している。

以上

文責 守山 治(SFSS 広報部長)

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