2011年7月16日土曜日

花粉症患者に迫る食物アレルギー(口腔アレルギー症候群)
















            京都大学名誉教授・低アレルギー食品開発研究所 小川 正

 覆面アレルゲンの存在によって食物アレルギー患者に引き起こされる不測の事故は、加工食品への特定アレルギー食品(7品目)含有表示を義務付けることで回避している。

 最近、バナナやリンゴを食べて、また豆乳を飲んで突然アレルギー症状を来して救急車で搬送されるケースが増加している。たいていの場合花粉症患者や、食品や医薬関連事業に従事し、ラテックス手袋を常用している成人に多くみられる現象で口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれている。

 突然のアレルギー惹起現象は花粉やラテックス中のアレルギー感作抗原(アレルゲンたんぱく質)に対して産生された複数のIgE抗体の内、いくつかの抗体が食品中、特に植物性食品に広く分布する相同性の高いたんぱく質と部分的に交差反応をして引き起こされることが明らかになっている。

 通常のアレルギー食品とは無関係な食材によって突然引き起こされるので、一般にクラス2アレルギー(間接アレルギー)として分類される。交差によるアレルギー症状の惹起の有無は図に示されるように、人によってアレルゲンに対して作られた複数の抗体(ポリクローナル抗体)の種類が異なり、その組み合わせに依存すると考えられるので、すべての花粉症患者がOASを発症するとは限らない。

 近年、医師によるアレルギー患者への回避指導にも多くの難題が増えているなかで、情報が整理されれば消費者への正確な注意喚起も可能になるであろう。とにかく、突然おこるので油断大敵である。


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